現在開幕中の、東京オリンピック2020。
世界中のアスリートたちがしのぎを削る姿に、思わず息をのむこともしばしばです。

さて、そんな世界のトップ選手たちは、身体を最高の状態に整えてパフォーマンスを最大限に発揮するために、質とバランスの良い健康的な食事をとても大事にしています。
「体づくり」「筋肉」「タンパク質」に連想されるアスリートの食には、動物性食品が必要不可欠だとイメージする方は多いのではないでしょうか。

しかし、実際のところ世界のトップレベルで活躍するようなアスリートたちの中には、プラントベース(植物由来)の食生活を取り入れている選手が多く存在しているのです。

東京オリンピック2020に出場しているプラントベースのアスリート

東京オリンピックに国の代表として選出された選手たちの中にもプラントベースの食生活を送る人が何人もいます。ここでは、7人の選手をピックアップして紹介していきます。

ノバク・ジョコビッチ選手(セルビア、テニス)

2021年の全豪オープンテニスで史上最多の9度目の優勝を果たし、世界ランキング1位の座に君臨するジョコビッチ選手は、実はプラントベースの食生活を採用しています。

本人自身はヴィーガンとは自称していないものの、加齢に伴って身体の不調や試合終盤で疲労を感じるようになったことをきっかけに食生活を見直すことにしたそうです。

植物性食品中心の食生活がアスリートたちにどのような効果をもたらしているのかを特集したドキュメンタリー映画『ゲームチェンジャー:スポーツ栄養学の真理』の製作総指揮に、ジェームズ・キャメロン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ジャッキー・チェン等とともに加わっています(VEGETIME関連記事: 映画『ゲーム・チェンジャー』が世の中を変える)。

自身でもヴィーガン料理レストランの「Eqvita」をモナコのモンテカルロに2016年に開店しているほどです。

THE TENNIS DAILY によると、彼が肉や乳製品を食べないのはテニスのためだけでなく、動物が食用に畜殺されることや酪農のあり方に疑問を持ち、地球温暖化への影響も懸念しているからだということです。

本大会では残念ながらメダルを逃してしまい、誰も予想もしなかった結果に衝撃が走りました。
猛暑や疲労などでパフォーマンスを充分に発揮することが叶わなかったようですが、彼の実力は筋金入りです。
8月30日から9月中旬にかけて行われる全米オープンテニスでの活躍を期待したいですね!

(参考:Novak Djokovic reveals his incredible vegan diet and reason he signed up for new film Game Changers – The Sun

ビビアン・コン(江 旻憓)選手(香港、フェンシング)

ワールドカップで優勝した初の香港人剣士で、「歴史を刻んだ」と言われています。
大学生の時にペスカタリアンになり、その後ヴィーガンに。

国際フェンシング協会による以下の取材動画では、フェンシング選手としての実績や意気込みとともに、ヴィーガンになった経緯やパフォーマンスに対する影響、ヴィーガンであることに対する誇りが語られています。

I saw all the benefits of being vegan; the ethical, the environmental, the social. All these things I could do to help contribute to a better, a bigger cause…I have all the protein I need. I’m recovering a lot faster. I get muscle pain but it goes away really quickly. I have become so much stronger after turning vegan.

(上記動画03:22より)

(仮訳)
ヴィーガンになると様々な良い事があるということ ー倫理的であるし、環境にも社会にも良いということー に気づいたのです。ヴィーガンになることで色々なことに貢献できることを知りました。(中略)必要なたんぱく質はすべて摂れています。回復がとても早くなりましたし、筋肉痛になることはあっても、すぐになくなっていくのです。ヴィーガンになって、はるかに強くなったと思います。

また、ヴィーガンとしての側面にもっとフォーカスした取材映像も。

“Being vegan has changed my life. As an athlete I’ve been able to recover so much faster from tough practices. All the benefits for the animals, for the environment. I turned vegan after my first ACL[injuly] and then I was having family dinner like this, in Chinese style, and they would all say “If you don’t eat meat you’ll never be a Champion!” At the time I had never won a World Cup so I started doubting myself, but at the same time I said “No, I’m going to show you guys that it’s OK.” And then, at the next World Cup, I won. So they have nothing to say anymore. I have a bigger motivation to train really hard and to keep my vegan lifestyle and show that I am strong enough to be a professional athlete on a vegan diet.

上記動画01:34より)

(仮訳)
ヴィーガンになって、私の人生は変わりました。アスリートとしては、厳しい練習からの回復が非常に早くなりました。動物や環境にも良い影響を与えています。最初の膝前十字靭帯損傷の後にヴィーガンになったのですが、家族でこうして中華料理を食べていると、みんなが 『肉を食べないとチャンピオンになれないよ!』と言うのです。当時はまだワールドカップで優勝したことがなかったので自信を失いそうにもなったのですが、同時に 『いや、大丈夫だということを皆に見せてやろう 』とも思ったのです。それで、次のワールドカップでは優勝しました。だから、彼らはもう何も言えないですよね(笑)。今では、一生懸命練習するとともにヴィーガンのライフスタイルを維持して、ヴィーガンの食生活でもプロアスリートになるだけの力があることを示す、ということにより高いモチベーションを持っています。」

ヴィーガンのアスリートとして高い誇りと情熱をもちながら、とてもチャーミングなコン選手。Instagramでもその魅力的な姿を見ることができます。
本大会では惜しくも個人では5位、団体女子では7位でしたが、今後の活躍に目が離せません!

ミッキー・パパ(カナダ、スケートボード) 

ミッキー・パパはヴィーガンのスケートボーダーです。
スケートボードは非常に繊細な技術と集中力が要される競技で、パパ選手は「スポーツと芸術の中間に位置するもの」だと言います。

もともとオーガニックにこだわりを持ち、食生活には気を遣っていていた彼は、完全なヴィーガンに移行することで健康面だけではなく身体的なパフォーマンスの向上も見られたようです。

VegOutによるインタビューでは、以下のように答えています。
「実際に、トップレベルのプロスケーターの何人かはヴィーガンです。より健康的なライフスタイルを求めるスケーターが増えているのは確かで、ヴィーガンもそのうちの1つです。(中略)私は年齢を重ねるにつれて、食事はすべてオーガニックであることが欠かせなくなり、最近では完全なヴィーガンに移行することにしました。健康面だけでなく、肉体的なパフォーマンスにも劇的な変化があります。食生活の変化が人生の質に大きく影響することを、長年にわたって目の当たりにしてきました。」(抜粋、仮訳)

(参考:Vegan Pro Skater Micky Papa on Skateboarding, the Olympics, and His Nonna’s Cooking (vegoutmag.com)

ケイリーン・ホイットニー(アメリカ、陸上 混合400m×4リレー)

陸上競技のホイットニー選手も、ヴィーガンです。
見事、男女混合の4×400mリレーで銅メダルを獲得しました。

アメリカのライフスタイル雑誌VegNewsで、このように語っています。
植物性食品を中心とした食生活に変えたのはよりよいアスリートになれると思ったからですが、実際にその通りになりました!トレーニング、回復、そしてパフォーマンスはここ数年で最高のものになっています。」(抜粋、仮訳)

(参考:Track Star Kaylin Whitney Goes Vegan for the Most Competitive Olympic Trials of Her Career | VegNews

アレックス・モーガン(アメリカ、サッカー)

共同キャプテンも務めていたモーガン選手も、実はヴィーガンです。
2020年に女の子を出産しましたが、東京オリンピックが1年延期になったことで本大会に出場することができるようになりました。


米紙のUSA TODAYによると、モーガン選手は子供の頃、広告でアスリートがミルクの口ひげをつけていたのを見て、強くなるためには動物性・乳製品からのタンパク質が必要なのだと考えていました。そのため、植物性食品中心の食生活ではプロのアスリートとしてプレーできるとは思っていなかったそうです。

しかし、チームメイトなどがヴィーガンの食生活においても成功していることなどから、2017年にはベジタリアンになりました。
2018年からはほとんどヴィーガンのライフスタイルにシフトしたそうですが、自身でも強化や疲労回復に効果があると実感しているようです。

(参考:https://www.usatoday.com/story/sports/2019/08/08/vegan-plant-based-diets-take-over-sports-world-alex-morgan-tom-brady/1921383001/

アリ・ライリー(ニュージーランド、サッカー)

同じくサッカー競技のライリー選手はニュージーランド代表のキャプテンで、90%ベジタリアンのフレキシタリアンであると自称しています。
(フレキシタリアンとは、基本的にはベジタリアンの食生活を送り、時に肉・魚を食べることもあるという柔軟な食生活を選択する人のこと)

肉が地球にどのような悪影響を与えるかということを知ってから肉を食べる量を減らすようになったそうですが、料理することや食べることが好きで、チームメイトでヴィーガンのトニー・プレスリーとともにクッキングショーGirls Gone Vegを運営し、ヴィーガンのレシピやクッキング動画、健康法などをYouTubeやインスタグラムにアップしています。

ヴィーガンのレシピを紹介するこちらのYoutubeでは、次のように話しています。

I’ve definitely noticed the recovery time is so much shorter when we’re going from game to game and we can be playing three games a week. So to reduce inflammation, to be able to be feeling good and not to be exhausted between games that time is so crucial for athletes. So that’s probably the biggest note, the biggest difference I’ve noticed and also just kind of feeling lighter and not weaker. So there’s no reason why you can’t get all your protein and be super strong and powerful while on a vegan diet.

上記動画03:48より

(仮訳)
「(植物性食品を中心的に摂るようになってから)次から次へと試合がある時に、回復時間が非常に短くなっていることを実感しています。私たちは1週間に3回もの試合を行うこともあります。試合の合間に、炎症を抑えて、疲れを残さず、気持ちよく過ごせるようにすることは選手にとって非常に重要なことです。これが、私が気づいた最大のポイントであり、最大の違いでもあります。それに、体が軽くなったような気もします。ヴィーガンだからといって全てのたんぱく質を摂取できないなんてことはないし、強い力を発揮できないということは絶対にありません。」

ライリー選手はGirls Gone Vegの運営を通して、伝統的なレシピをいかに簡単に “ヴィーガン化 “できるかを伝えたいと考えているそうです。

(参考:Girls Gone Veg (wearegirlsgoneveg.com)

ビクトリア・スタンボー(プエルトリコ、テコンドー)

スタンボー選手は、ヴィーガンのテコンドー選手です。

膝の手術を今までに何度も受けていて、2019年にも6回目の手術を行ったのだとか。術後の傷から、東京オリンピックへの出場も難しいと言われたそうですが、懸命にリハビリした結果本大会の出場権を獲得されました。

Instagramで、”What a Vegan 🌱 Olympian looks like… strong! It’s a lifestyle ☮️ “「ヴィーガンのオリンピック選手は…なんて強く見えるんでしょう!ヴィーガンはライフスタイルなのです(仮訳)」と投稿しています。

惜しくも本大会では全体17位でしたが、今後の飛躍にも期待したいですね!

(参考:Victoria Stambaugh (centurymartialarts.com)

以上、7名の選手を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
皆それぞれに、パワフルで情熱的なアスリートであること、そして、プラントベースの食事が彼らのパフォーマンスを支えているということが伝わったかと思います。

選手村のベジタリアン対応食堂

最後に、そんなプラントベースのオリンピック選手たちが選手村の食堂でどのような食事を摂っているのか、気になりませんか?

アルゼンチン代表のバスケットボール選手、フランシスコ・カファロ選手が選手村の食堂の様子をTikTokで紹介してくれています。
以下の動画を見てみると、多様な料理の中にグルテンフリーとベジタリアンのコーナーがあるようです。

また、上記で紹介したヴィーガンのビビアン・コン選手(フェンシング)も、Instagramで食事の様子を投稿しています。
品数も豊富で、美味しそうですね!

最後に

繊細で安定した技術と強靭な精神力、そして洗練された身体が高いレベルで要求されるスポーツ選手。
その中でも各国を代表して出場するオリンピック選手たちは、どんなに卓越した身体能力と精神力を持っていることでしょう。

動物性食品がパワフルさやたくましさに直結するという考え方は、必ずしも正しいわけではありません。
プラントベースでも身体に必要な栄養素を充分に摂取することは可能で、スポーツにおいて最高のパフォーマンスを発揮することもできるのです。

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