この記事は、昨年日本語に翻訳されたメラニー・ジョイ博士の著書『ヴィーガンとノンヴィーガンのためのコミュニケーションガイドブック』(原題『Beyond Beliefs』)についてのインタビューの後編です。前編では、カーニズム(carnism)という概念、ジョイ博士の活動、自著の日本語訳について話していただいた内容を紹介しています。

前編はこちらから:
【前編】メラニー・ジョイ博士へのインタビュー: カーニズムと『Beyond Beliefs』の日本語訳出版について

画像:melaniejoy.org

インタビュー本編

――「ヴィーガンの味方(vegan ally, ヴィーガン アライ)」という用語を著書の中で使われていますが、その意味についてご紹介いただけますか?

ジョイ:「ヴィーガンの味方」とは、完全にヴィーガンの生活を送っていなくても、ヴィーガニズムやヴィーガンの人々を支持する人のことです。立ち止まって考えたときに、動物への不必要な害は与えたくないと思う人がヴィーガン以外にも多いでしょう。

ヴィーガンの味方として行うと良いことの一つは、できる限りヴィーガンの生活を送ることです。それがどういう意味なのかは個人によります。動物由来の食品を完全に「排除」できなくても、動物由来の食品を「押し出せ」ばよいのです。食事により多くの植物由来の食品を取り入れれば、動物由来の食材が入り込む余裕もなくなりますよね。

ヴィーガンの味方として、ご自分の影響力を活用して、この運動を支援することもできます。たとえば、報道関係者やジャーナリストであれば、ヴィーガニズムについての記事を書いたり、意識を高めたりすることができます。あるいは、ヴィーガンの子どもをもつ親であれば、親子で連帯し、お子さんの食事やライフスタイルのニーズが満たされるようにサポートすることができます。ヴィーガンの味方には、複数の問題の解消に繋がる活動に寄付をしたい慈善家もいます。ヴィーガンの活動に寄付すれば、動物への害、環境への害、人間の健康への害など、様々な害を減らすことができます。ヴィーガンの味方であるということは、要するに、ヴィーガンの運動を支援することです。

また、ヴィーガンの味方であるということは、あなたの周りにいるヴィーガンをサポートすることも意味します。ヴィーガンはイデオロギー的な少数派であるために、批判の対象でもあります。ヴィーガンの人々は、社会的に蔑視されたり、ステレオタイプ付けをされることが多くあります。自分にとって最も重要なことが周りの人々には見えていないことに気づき、落胆するヴィーガンも多くいます。ヴィーガンの内面を理解することは、彼らの味方になるうえでとても重要です。ヴィーガンの人々の内面を理解しなければ、食卓に死んだ動物が置かれている状況がいかに苦痛であるかを理解することはまず難しいでしょう。

ですから、ヴィーガンの味方は、周りにいるヴィーガンにとって何が重要なのかをまず学びましょう。逆に、もしあなたがヴィーガンであり、誰かに味方になってほしいと思う場合は「畜産業についての情報を共有させてください。あなたをヴィーガンにしようとしているのではなく、私に世界がどう見えているのかを理解してもらいたいのです」と伝えると良いでしょう。

 

――ヴィーガンの人々は社会的に蔑視されるとおっしゃいました。これはどの国でも同じだと思いますが、日本ではかなり顕著だと思います。例えば、Youtubeなどで「ヴィーガン」を日本語で検索すると、一番最初に表示されるのはヴィーガンの人をからかうような内容のものです。このようなヴィーガニズムの歪んだイメージやスティグマ*を払拭する上で、効果的な方法は何だと考えますか?

*スティグマ:社会的な汚名や不名誉

ジョイ:日本における運動がまだまだ新しいことがそれに関係していると思います。他の国でも最初はそうでした。私が『Beyond Beliefs』を書いた理由の一つは、自分に向けられるスティグマを内面化してしまい、自分自身を恥じてしまうヴィーガンの人々を勇気づけるためです。カーニズムに反対する人々にレッテルを貼ることで、カーニズムはさらに強まります。レッテルを貼ることで、ヴィーガンの人々の主張を真に受ける必要を無くそうとするのです。たとえば、ヴィーガンは感情的な動物愛好家として描かれることが多いです。感情的に描くことで、合理的ではない、したがってその人の意見は聞く価値がない、とされます。これにより、多くのヴィーガンは自分の敏感さに対して恥を感じがちです。しかし、現代において私たちが直面している多くの問題の原因は敏感さではなく、鈍感さだと思います。

カーニズムに伴う残虐な行いに対して沸く悲しみや怒りなどの感情は健全で正当な心理的反応です。問題はむしろ、そこに何の違和感も抱かない、麻痺しているマジョリティーの感覚です。私は、その感覚の麻痺を認知することが、ステレオタイプを払拭する上で重要だと考えています。

また、ヴィーガンの人自身が相手の攻撃的な姿勢を和らげるようなコミュニケーションをとることも大切です。これがプログラムやトレーニングを設けた理由の一つです。自分の感情を理解してコントロールすることで、挑発されたときに、向けられたステレオタイプ(例えば感情的になるなど)を体現してしまうことがないようにすることが重要です。『Beyond Beliefs』でも触れていますが、このような自己コントロールにより、マジョリティーである肉食文化の中で生活しやすくなるでしょう。

 

――日本は米国や私の母国であるオーストラリアに比べ、ヴィーガンの選択肢が少なく、完全にヴィーガンの生活を送ることができないと感じられる方が多いと思います。このような方々に何かアドバイスはありますか?

ジョイ:できる限りヴィーガンを取り入れていくだけでもOKですよ!みんなが可能な範囲でヴィーガンに取り組んでいれば、世界はかなり速いスピードで変わるでしょう。日本では「ヴィーガニズム」よりも「プロヴィーガニズム(ヴィーガニズム推進派)」を促進する方が理にかなっているのかもしれません。そして、主な障害が何なのか(例えば、ヴィーガンの食生活を知っている、もしくは推進している日本のお医者さんが少ないことが課題か?など)を特定して、そこに注力すれば良いでしょう。

ヴィーガンの運動がまだ根付いていない地域でヴィーガンになることは本当に難しいことだと私も理解しています。そのような環境でヴィーガンになる人々は「私はこれから先ずっとダンボールしか食べれなくなっても大丈夫」と言いそうな、本当にストイックな人たちが多いと思います。でも、そのような生き方を人に勧めるのは難しいことです。自分や他人にも余裕をもたせるうえで「プラントベース寄り」や「ヴィーガン寄り」の食生活を推奨するのも良いでしょう。そういった選択をする人が一定数増えれば、ヴィーガニズムへの抵抗は大幅に減るため、それも良いことです。

――ヴィーガニズムについてまったく知らない、または、人がなぜヴィーガンを選ぶのかを理解できていない方もいると思います。ヴィーガニズムについてもっと多くの人々に理解してほしいことはありますか?

ジョイ:ヴィーガニズムは単なるトレンドではなく、「思いやり」や「慈悲」といった、世界のほとんどの人々が共通でもっている基本的な道徳的価値感の実践的な表れです。日々の消費行動において、動物や地球に害を与えたくない意思として表れるものです。これに気づくことが非常に大事だと思います。多くの人々がこれに気づかない大きな理由として、カーニズムが私たちに肉食が当たり前のことだと勘違いさせていることが挙げられます。

 

――何か他に言い残したことはありますか?

ジョイ:日本ではまだ新しいこの運動の最前線に立っているヴィーガンの皆さんに心からの感謝を申し上げます。決して簡単なことではないと思いますが、重要な活動であることに変わりありません。カーニズムからのプレッシャーに怯むことなく、ご自身の価値観と真摯に向き合う皆さんに尊敬と感謝の念をお伝えしたいです。

御礼

ご経験やご活動についてご共有いただきました、メラニー・ジョイ博士とBeyond Carnismチーム、そしてジョイ博士の『Why We Love Cows』および『Beyond Beliefs』を和訳された玉木麻子氏に感謝申し上げます。

 

もっと知りたい!という方へ

【『ヴィーガンとノンヴィーガンのためのコミュニケーションガイドブック』の入手方法】

メラニー・ジョイ博士の『Beyond Beliefs』の日本語版(『ヴィーガンとノンヴィーガンのためのコミュニケーションガイドブック』)は、Amazon楽天紀伊國屋書店などのオンライン書店で購入できます。

 

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