昨年7月にオープンしたプラントベースの専門店、KOMEDA is □(コメダイズ)を運営する株式会社コメダの臼井興胤社長へ地球に優しい食生活として注目を集める「ヴィーガン・プラントベース」の動向についてお話を伺いました。今回の対談では株式会社染野屋の小野篤人社長にも同席いただき、NPO法人ベジプロジェクトジャパン川野陽子代表理事がファシリテーターを務めました。

先日行った小野社長へのインタビュー記事はこちら:
日本初「プラントベース・ミンチ」ついに発売、文久二年創業の染野屋から

株式会社コメダ代表取締役社長 臼井 興胤 氏

今回のインタビューを通して、臼井社長も小野社長も、地球環境問題に真剣に向き合っていらっしゃることを感じました。お二人にプラントベースへの思いや経済界の課題も含め、赤裸々に語っていただきました。

真の「くつろぎ」を提供

(左から)コメ黒 コメダブレンド 

ーKOMEDA is □ のオープンの経緯について教えてください。

臼井社長:新しい形態を模索している中、「不二製油グループ本社株式会社」様の取り組みを聞きました。同社の清水洋史取締役相談役に「家畜を飼育することでどれだけ地球環境に影響を及ぼすかご存じですか」と聞かれ、365日お肉を食べていた私は衝撃を受けました。お客様に「くつろぎ」を提供することがコメダのテーマなのですが、その時、地球環境に良いことをするという意識をもつことも、くつろぐために大切な要素の一つだと感じました。

さらに親戚がヨーロッパではすごいスピードでお肉を食べない方向に変化していることを教えてくれました。日本でもオリンピックを契機に海外のベジタリアン・ヴィーガンに啓蒙されて今後その流れは来ると感じましたね。そのような経緯を経てプラントベースの食事を提供する喫茶店という今のKOMEDA is □ のコンセプトが一つの方向性として出てきました。社内から商売になるのかと反発もありましたが、たまには地球環境のことを考えながらお肉を休む日を作るということも良いのではないか、また「地球とくつろぐ喫茶店」というコメダらしい世界に一つだけのコンセプトは、ベジタリアン・ヴィーガンでなくても受け入れられると考えました。

まあ、コロナが来て色んな目論見が外れてしまいましたが(笑)

KOMEDA is □ エントランス

KOMEDA is □ のオープン後、反響はいかがでしょうか。

臼井社長:普通のコメダとは客層が異なり、情報感度の高い方や外国人が多い印象です。メディアにも多く取り上げてもらい、コメダブランドを発信するという意味で着々と進んでいるという感じです。

食は一番身近なエンターテインメント。「おいしい味」で継続できるプラントベースを。

株式会社コメダ代表取締役社長 臼井 興胤 氏

ー臼井社長ご自身が週に一度プラントベースの日をつくっていると伺っています。実際にやってみていかがでしょうか。

臼井社長:小野さん(染野屋社長)のところの商品に非常に助けられてますよ(笑)

最初は一人で始めた週一のプラントベース生活でしたが、だんだんと家族も一緒に実践するようになりました。妻の協力で臼井家にも浸透しています。子供もお肉じゃないとは気づかずに少しずつプラントベースの食事へシフトしていっています。小野さんの商品では僕は「炙り焼きソミート」が好きです。小野さんの商品がないと僕はプラントベース生活ができないですよ(笑)

小野社長:ありがたいですね。僕もあれがないとヴィーガンでいられないですね(笑)

ー臼井社長は結構がっつりした味がお好きそうですよね。(臼井社長頷く。)やはりそういうお料理からプラントベースが受け入れられていくと思われますか。

臼井社長:そうですね。地球のためとか身体のためというのも重要ですけれども、僕は食は一番身近なエンターテインメントだと思っているんです。自分が好きなものを食べたりお腹いっぱいになって楽しかったりすると、豊かな気持ちになりますよね。食べることは、一番簡単に幸せになれる方法だと思っています。だからKOMEDA is □ では、美味しさや満足してもらえることにこだわっています。

自分の食生活をちょっとずつでも変えていくことが次に繋がっていく

再生の木(古材を利用して作られた、KOMEDA is □ のシンボルツリー)

ープラントベースを実践される中で、地球環境や身体のためにも良いですが、ワクワク感とか楽しさを感じられたりもしますか。

臼井社長:僕はあまり地球環境を意識はしてこなかったのですが、パッと気が付いてみると、50年前の小学生の時と比べて体感的に5度気温が上がっている感じがしますね。これが地球に良いということはないし、地球温暖化が進んでいるのではないかと感じます。今までは次の世代を意識せず生きていましたが、自分の子供の世代を考えなければバチがあたるなという印象を受けています。

自分の食生活や行動をちょっとでも変えることが何かに繋がっていく。一人が変わっていき、その「一人」が増えていくことから積み上げていく。僕から僕の家族にプラントベースが広まったこともあったわけじゃないですか。面白いなと思いました。

コメダで身近にSDGs実践

ーSDGsによってプラントベースが注目されていくこともあると思いますが、経済界ではSDGsの延長にプラントベースの選択肢が見られていますか。

臼井社長:今の経済界の取り組みを見ていると、これまで好き勝手やってきたものを今更経済成長と地球環境保護の両立だといってもバランスが取れるかは正直難しいと思っています。世の中の仕組みを作る人が本気でモデルづくりに取り組むことが重要だと考えています。

コメダのような単なる喫茶店が経済界に何ができるかというと、大きなことではなく、一人ひとりにSDGsに取り組んでもらうことだと思っています。店内にSDGsカードを設置してみたり、身近にSDGsに触れてもらって人の行動がちょっとでも変わっていったりすることが大きな力になると考えています。経済成長を担う人が経済界のSDGsへの取り組みを見せていても、その人自身がSDGsを実践していないと、発言が胡散臭いと思ってしまいます。皆さんはどうなんですか、と問いかけて一人ずつの実践が大事だと思います。

そうですね、皆さんの一人ひとりの行動が世界を良くすることに繋がると思います。小野社長が12年間訴え続けてこられたことにも繋がっていますよね。

小野社長:はい。でも、上場企業のホットな臼井さん自身がプロジェクトを動かしている。この影響力はものすごく大きいと思いますね。先程の「皆さんはどうなんですか」という言葉には鳥肌が立ちました。

臼井社長:いやいや、60年間今まで悪さしてきた中でできることは限られていますけど、できることからやっていくしかどうしようもないですよね。

消費者の感度に合わせた工夫

ー全国のコメダ珈琲店でもいつかプラントベースの食べ物が食べられるようになるのでしょうか

臼井社長:商売でやっている以上、これはお客様次第ですね。まずは色々なオプションがあることを知ってもらうことからだと思っています。例えばモーニングトーストに塗る豆乳。最初はほとんど選ばれなかったのですが、今ではバターを頼む方の2、3割が塗る豆乳を選ぶようになってきました。人々の感度というのは上がっていると思いますよ。その感度に合わせて、KOMEDA is □ で人気のあるメニューの全国展開もあると思います。

タイミングを見ながらではないと、商売として成り立たない上に人々の反応は「ふーん」で終わってしまうと思っています。

ータイミング、大事ですよね。早すぎても販売終了してしまうケースもあると思うので、臼井社長だからこそ見計らって進められているのだと思います。

ー臼井社長の奥様が取り組まれているという「お肉が入っていないと子供たちに気づかれないお料理作り」のようなことも、一般のお客様にプラントベースを取り入れてもらうことに効果的ではないでしょうか。

臼井社長:なぜ最初からお肉ではないことを言わないかというと、「偽物は嫌だ」という感覚があるからです。子供がそう感じるのは驚きですね。代替物だと偽物だと感じてしまう。だから大豆ミートも「ミート」という名で売らない方が良いのかもしれないですし、これは本物で美味しいんだと感じてもらえるように工夫して啓発していくことが課題でしょうね。

第三のお肉とも言われていますが、今は試行錯誤の中で代替感は残ってしまっているのが現状かと思います。でも、例えば豆乳は一般的な牛乳とは違う美味しさの価値を生み出しているように感じています。そのように大豆ミートも代替品ではないポジションが確立されていくと良いですね。

ーちなみに、臼井社長と小野社長の仲の良さの理由は、プラントベース繋がりでしょうか。

臼井社長:小野社長のようなキックボクシングをされる方がお肉を食べずに生きていけることに驚きがありました。お肉を食べなくてもあんなにエネルギッシュだし僕は小野社長に自由を感じます。そこにすごく憧れますね。

小野社長:ほんとですか(笑)でも臼井さんと僕はすごく似ていますよね。

臼井社長:(頷きながら)似てるよね。

小野社長:臼井さんは、上場企業の社長の域は完全に超えてますからね。バイクの制限速度だけじゃなくて(笑)環境問題の本質を見てまっすぐ走れる。そして、ここを商売にしないと流行らないからということもちゃんと考えて動いているというのが、かっこいいですよね。

臼井社長:いやいや、まあなかなか大変なことだと思いますけども、絶対成功させたい。成功させないと地球は滅びるっていう話で、やらないといけないという使命感もありますね。

自分の価値観を考える消費者の動き

ー臼井社長は’挑戦’をテーマとされていると伺いましたが、何を挑戦されるのでしょうか。

臼井社長:コメダという喫茶店が提供するものというのは、くつろぎです。昔からの喫茶店は身体を休めるような場所ですが、21世紀の日本で注目したいのは身体よりも心の疲れです。日常のフラストレーションから休みたいと思う心の疲れがあると思っています。コメダのミッションは「心にもっとくつろぎを」。人間は悪いことをやっていると心がくつろがないはずですよ。ポストコロナで僕は加速すると思いますが、食生活一つをとっても消費者が正しい生き方を考えるようになり、これからの消費も自分の価値観に合った、正しいことをする方向に向かっていくのではないか。その時にKOMEDA is □ のように「地球環境に優しくもっとバランスよく生きていったほうがいい」というメッセージがお客さんの心に刺さると思いますね。心に刺さると心がくつろぐはずです。

商売というのはツボがあって、お客さんの求めているもの、かゆいところに手を出すことだと思っています。ポストコロナで心がくつろぐためのストーリーや価値観、KOMEDA is □ に行ったらコメダの価値観を一緒に体感できる。KOMEDA is □ に一年通ったらどこかに一本木が生えるとかそういう気持ちになってもらえたら嬉しい。そうすると商売にも良いし、多くの人の心がそうなったらいいなと思いますね。

ーお肉を食べないことが地球に良いことは欧米では当たり前のように知られているけれども、日本ではまだ知らない人が多いと思います。この状況をどうしたら変られると思いますか。

小野社長:コロナ禍で皆さん自分のことを色々考えて、心の価値観に耳を傾けていると思っています。みんながどうだからではなく、自分が何を選ぶかという考えが間違いなく進んでいる。この心の準備さえ出来ていれば、日本人は学習能力が高く、環境負荷の知識は一年もあれば欧米をも超えると思っています。今では食肉の環境負荷を絡めた報道は国内でも毎週どこかでやっていますよね。数年前に比べてすごい変化だと思います。

臼井社長:今のZだとかミレニアムだとか、若い人たちが世の中をすごいスピードで変えていくと思います。人間は一度も退化せず進化していることを今の若い世代を見ていて思います。若い人たちは、給料が上がるとかではなく、自分が何のために生まれて何のためにこの仕事をしているかを普通に話す世代。僕らの世代は競争してもっと作ってもっと稼いでお金儲けをやってきた。それがこの結果。競争は使いきれない以上の物を作りだし、色んな不均衡な問題が起こっています。そのような仕組みは長続きはしないものですよね。それを今の若い世代は気づいていると思います。

では今何が阻んでいるかというと、それは大企業のビジネスモデルなわけで、作り上げたものを変えるのはなかなか難しいものです。環境負荷を分かっていても作り上げてきたものが大きすぎて、変えてしまうと既存ビジネスが立ち行かなくなってしまうことを危惧している。既存ビジネスと地球環境とのバランスをとるところからやるからそうなると思います。正しいことをするというのは難しいので、気づいているのに出来ないのは「かわいそうだな」と感じることがあります。一方でコメダはまだまだ身軽に消費者に影響を与えられるのではと思っています。そしてインフルエンスがあるならば、取り組んでいかなければいけないなとも思います

分かっているのに動けないというところが驚きです。そこをうまくお金にもできて既存ビジネスにとってもメリットがあるところにもっていけたら良いですね。

KOMEDA is □ に来て自分の気持ちのありようを感じて頂きたい

KOMEDA is □ の内観

ーKOMEDA is □ の客層と、コメダ珈琲店の客層が違うとおっしゃっていましたが、コメダ珈琲店に通われている方にメッセージをいただけますか。

臼井社長:全国のみなさん、東銀座のKOMEDA is □ は歌舞伎座から100mもあれば行けます。我々がお客様に提供するのはくつろぎ。お近くのコメダでくつろいでいらっしゃるとは思いますが、ここに来てお茶を飲む方が間違いなく地球環境に良いはずで、そのときの気持ちのありようを感じて頂きたい。もっと自分の気持ちが安らかになってもらえたら嬉しいです。KOMEDA is □ に来てもっと何か大きな循環の中で自分が生きているんだということを感じてもらいたいと思いますね。

ーはい!この度は貴重なお話を聞かせて頂きましてありがとうございました。

今回のインタビューを通し、臼井社長のプラントベース事業への想いが予想していたよりも随分と大きなものだと感じました。「お客様に心のくつろぎを大切にしてもらうことで地球環境改善を図っていく」という、KOMEDA is □ の存在価値をまた一つ知ることができました。

ちなみに、臼井社長のKOMEDA is □でお好きなメニューはべっぴんバーガーアボ照りだそうです。ぜひ東銀座のKOMEDA is □ を訪れた際にはご注文くださいね。

べっぴんバーガーアボ照り

【お店情報】
KOMEDA is □ 東銀座店
住所 :〒104-0045 東京都中央区築地1-13-1 銀座松竹スクエア1階( GoogleMAP
営業時間: 7:00~23:00(L.O. 22:30) ※自治体の要請に応じて営業時間短縮の可能性有
最寄り駅 :日比谷線・都営浅草線 「東銀座」 駅
公式HP:https://www.komeda-is.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/komeda_is/

【企業情報】
株式会社コメダ
公式HP:http://www.komeda.co.jp/

株式会社染野屋
公式HP: https://www.somenoya.com/
公式Facebook: https://www.facebook.com/somenoya/

NPO法人ベジプロジェクトジャパン
公式HP:https://vegeproject.org/
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