肉、魚介、卵、乳、蜂蜜といった動物性食品に由来するものを食べない、さらに身に付けないというヴィーガンになる理由は、探れば探るほど出てきます。
1)環境に優しい
2)食肉処理場では、動物の状態だけでなく、そこで働く人々にとっても危険で過酷な状況だといわれることがある中、そのような食肉処理場を有する企業を支援しないことに繋がる
3)コレステロールを下げる、寿命が長くなるともいわれていて、健康にも良い
などなど、上記の他にも様々な理由でヴィ―ガンになる人がいます。そして、ヴィ―ガンとして日々楽しく生活している人がいます。
しかし理由を知った上でも、生活を変えるのは難しい人も多いのではないでしょうか。
食べ物は家族との思い出や文化への誇りも詰まっているでしょう。「100%ヴィーガン」の食生活を送ることはいつも簡単とは限りません。また食生活が多様化している世の中ですが、ヴィ―ガンの選択肢が常にあるわけではないでしょう。
そこでヴィ―ガンへの切り替えがすぐには難しい人に、「フレキシタリアン」という食生活をご紹介したいと思います。
「フレキシタリアン」は英語の “flexible” という言葉に由来しています。
「フレキシブル」、つまり柔軟な態度をとることです。
大半はヴィーガンを心がけヴィーガニズムを応援するものの、100%ヴィーガンでない時がある人も、「フレキシタリアン」という立場で、ヴィーガニズムに関わることができます。
定義が曖昧なことも良いところで、フレキシタリアンには色々な人がいます。大体ヴィーガンやべジタリアンで、特別な機会だけ動物由来のものを食べる人もいれば、ルールを決めて朝と昼はヴィーガン食にしている人もいます。
「ミートフリー・マンデイ」という、月曜日は肉を食べないキャンペーンも世界中で広まっていますが、そのような取り組みもフレキシタリアンの中に含まれます。
フレキシタリアンを定義づけするとしたら、
「なるべくヴィーガンであるが、精神的に無理せず、自分に居心地のよいペースでヴィーガンを取り入れていくこと」です。
実はフレキシタリアンでも、ヴィーガンでいることの恩恵をかなり受けることができます。例えば健康の面では、ある研究によると、食事の70%が植物由来の人は一番肉を多く食べているグループに比べて、心臓病で死亡する確率が20%低かったのです。
(資料出典:https://health.usnews.com/best-diet/flexitarian-diet/health-and-nutrition)
また植物からしか取れない食物繊維を毎日10g余分に食べることで、大腸に関連する病気のリスクも9%ずつ下げることができます。
(資料出典:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24216326/)
さらにヴィーガンの食べ物をより多く摂取することで、植物からしか取れない、老化防止の抗酸化剤もより取り入れることができるでしょう。
他にも、動物虐待、人権問題、環境の破壊の観点で、これらにほぼ加担しないヴィ―ガンに対し、フレキシタリアンも、何もしないよりもずっと良いということもポイントです。
そんな恐ろしいものに対して中途半端に加担するなんて!と思う人もいるかもしれませんが、世の中の人の多くは、あまりにも恐ろしいから目を背けたくなっていることが現状でしょう。それに、何かしてあげたくてもいきなりヴィーガンになることはハードルが高すぎと感じるのが多くの人の実情。
そのため、こういう重いトピックを自分のペースで、罪悪感に潰されず向き合っていくことが大事だと思います。
フレキシタリアンは人の「できる範囲」が一人一人違うということを尊重する思考です。
みんな自分のできる範囲で行動を起こすのが、世界を変える力をもつのではないでしょうか?
私は今年でヴィーガン2年目になりますが、ヴィーガンの広め方についていろいろ考えてきました。近年のアメリカでヴィーガンは特に広まっていますが、実はベジタリアンとヴィーガンの数は全く上がっていません。しかし、フレキシタリアンの人は増えています。自分を「フレキシタリアン」と名乗らなくても、アメリカ人の多くは肉食を減らそうと思っていて、4分の1は実際にもう減らしていると言われています。
(資料出典:1.https://vegconomist.com/studies-and-numbers/56-of-americans-are-likely-reducing-meat-as-a-new-year-resolution/
2.https://thehill.com/changing-america/sustainability/environment/480049-fewer-americans-are-eating-less-meat-heres-why)
どのヴィーガン商品の会社に聞いても、お客さんのほとんどはヴィーガンやベジタリアンではないと報告しています。つまりアメリカでのヴィーガニズムの成功は、フレキシタリアンのおかげなのです。
さらに、フレキシタリアンが動かしているのは経済だけではありません。
フレキシタリアンが多ければ多いほど、社会で「ヴィーガン」が普通として見られ、良い風として受け止められるようになります。フレキシタリアンは完全にヴィーガンの消費をしなくても、ヴィーガンの魅力やヴィーガンレシピについて話すことができます。また、周りの人にヴィーガンの良いイメージを広めることができたりと、周りの人にとっての情報源となります。
もしかしたらそれは一人一人の消費の仕方より大事なインパクト、つまり社会的波及を助長するという大事な役目を果たしてくれるのかもしれません。
ヴィーガニズムは堅苦しいムーブメントではありません。環境や人権や動物の保護を気にする人や、もっと健康になりたい人を含め、全ての人が歓迎されるでしょう。
今度もし機会があれば、スーパーでヴィーガンの食材を買って試したり、ヴィーガンレストランを訪ねたり、ヴィーガン料理を一つ覚えてみるのはいかがでしょう。